シンポジウム
Cinematic Voices Vol. 6

「音楽の実験とは何か?その目的?」

ベルリン・現代アート・センター「ポーデヴィル」
音楽キュレーター/エルケ・モルトレヒト氏と共に


日 時
2003年12月9日(火) 18:30
会 場
東京ドイツ文化会館ホール(東京都港区赤坂7-5-56)
※日英通訳つき
主 催
AIRPLANE LABEL
問合せ 3230-7015(担当 畠山)
e-mail:lamu@kt.rim.or.jp
定 員
200名(事務局まで要予約・先着順)
参加費
1,000円
申込み
AIRPLANE LABEL
TEL:03-3230-7015 FAX:03-3230-2221
E-mail:lamu@kt.rim.or.jp




「PODEWIL」=エルケ・モルトレヒト

ベルリンのアートセンター「PODEWIL」の音楽キュレーターとして先鋭的な音楽に発
表の場を提供し続けている。彼女に見いだされ「PODEWIL」を通過して世界へむかっ
ていった才能はジム・オルーク、カール・ストーン、テーリ・テームリッツ、クリス
トフ・フリードマン等々枚挙にいとまがない。
彼女は同時にドイツの、或いはヨーロッパの硬直してしまった古典的な現代音楽界に
風穴を開けようとする闘士でもある。
壁に取り囲まれたかつての西ベルリン市は新しい芸術を保護し支援することによって
ベルリンの空洞化を阻止してきた。
壁の崩壊後、旧東ドイツ市の中心地、アレキサンダー・プラッツ。その象徴でもある
テレビ塔の裾野の荒れ果てていた邸宅跡を改造して「PODEWIL」は設立された。
旧東側に流れ出した若い西側の芸術家達が占拠したタヘレスの自由奔放さとは対照的
に、むしろ東のスタイルを継承し統一ベルリン市によって運営される官僚的なアート
センターとして「PODEWIL」はスタートすることになる。
月日が流れると不思議な逆転が起きる。ベルリン市はドイツの首都として復興し、街
は次第に整備され、タヘレスは市によって買い上げられ今はむしろ観光名所としてそ
の姿をとどめるにすぎない。若い芸術家を保護し援助する必要のなくなったベルリン
市はその文化予算をさらに文化に貢献しているであろうと思われるベルリン・フィル・
ハーモニーやオペラ座等々の権威に高額をそそぎこむようになる。
今度は「PODEWIL」だけが資本主義の利権争いの荒海に孤島のように存在を浮かべる
ことになる。ノン・コマーシャルの実験芸術の存続だけを盾として。

エルケ氏は旧東ドイツのライプチッヒで古典音楽とジャズと東欧の現代音楽に囲まれ
て育った。彼女の父親は彼自身が理解しないのにもかかわらずペンデレツキ、ルトフ
ワフスキー、リゲ?ティーなど当時の東欧の最先端音楽のコンサートへ幼少の時から
積極的に連れて行ってくれたと言う。その体験が今でも生きているのではと考えてい
る。逆に欧米のロック・ミュージックからは国策によって隔絶され、初めてベルリン
でクラブを訪れた時の驚きは思い出として忘れられないという。ジャズは旧東ドイツ
で認知されていた音楽だったが不思議なことにみんな譜面台を立てて演奏するのよと
いって笑った。
1992年から「PODEWIL」に参画した彼女はその後ミニマル・ミュージックやフリー・
インプロビゼーション・ミュージックからコンピューター・ミュージックへの移行を
直接体験することになる。「もうだれもスタジオを貸してくれとか言わなくなったの。
驚いたわ」
コンピューターが音楽を、そして音楽のカテゴライズも変革させたことには間違いな
い。音楽家のアイデアを再現するのに楽器や演奏家のファクターが必要なくなったこ
と、これはすごいことだったと彼女は言う。しかし、過去形だ。その後の膨大量のコ
ンピューター・ミュージックの出現、無数のアイデアとバリエーションの繰り返し、
ベルリンそして全ての地下に蔓延するエレクトロニクス・ミュージックの増長に彼女
が肯定的であるはずは無い。
音楽が他の芸術分野に比べて最も良質な抽象性とエネルギーを持っていると信じる彼
女は次の可能性をそしてまた次の可能性を探し求めていく。


パネリスト(予定)

エリケ・モルトレヒト(ベルリン・ポードウイル音楽キュレター)

テーリ・テムリッツ(作曲家)

カール・ストーン(実験音楽家)

フランク・ストファー(SONOREレーベル代表)

三輪眞弘(作曲家、IAMAS教授)

クリストフ・シャルル(実験音楽家、武蔵野美術大学助教授)

三本松倫代(神奈川県茅ヶ崎現代美術館学芸員)

佐々木敦(評論家)

有馬純寿(音楽家、IMI講師)

足立智之

古館徹夫


主催:エアプレーン・レーベル 
情報科学芸術大学院大学・岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)

協力:東京ドイツ文化センター
国際交流基金