星野道夫さんとの出会いと、始まりの時

星野さんの本との出会いは今から19年前。初めて読んだとき、余りのスケールの大きさと言葉の深さに一度では理解できず、読んでは数行戻って読み返すことを繰り返した記憶がある。しかしとても感銘を受け、友人に星野さんの本を勧めた時も、とてもスケールが大きく文章が深いので、繰り返し読むようにと伝えたことを今でもはっきりと覚えている。

星野さんの写真展にも何度も足を運び、まるで自然と一体になって撮影したかのような写真の数々に圧倒され、心奪われていた。

それから10数年の歳月が経ち、僕は、自然やスポーツ、音楽やアート、ヒューマンなど、様々なジャンルのドキュメンタリーナレーターとしてキャリアを積み重ねて行った。

そして2012年。六本木ミッドタウンのフジフィルムスクエアで開催された星野さんの写真展を拝見しながら、写真の下に書かれているキャプションを読んだ時、僕は、「星野さんの言葉を語りたい。そして多くの人々にこのメッセージを伝えたい。」という思いが強く沸き上がってきた。当時僕は、TBS「THE世界遺産」や、BS11「世界豪華客船紀行」のナレーションを担当しており、自然や旅への関心が以前にも増して高まっていた。「星野さんの言葉を、人々にきちんと伝えられる語り手は、星野さんの本を何年にも渡り読み続け、彼の自然観や人生観に影響を受け、且つ、ドキュメンタリーナレーターとしてキャリアを積み重ねてきた僕しかいない」「これまでのキャリアの全てを賭けて、多くの方々に星野さんの心と言葉を伝えたい」と強く思った。

これが、この作品「悠久の自然 アラスカ」の始まりでした。


磯部 弘