「悠久の自然 アラスカ」の誕生と、この作品で伝えたいこと

構成台本を書くにあたり、自分の中で一つ決めたことがある。それは、「星野さんの撮影スタイルに出来る限り近づいて台本を書き上げる」ということ。星野さんの撮影スタイルは、セスナでアラスカの大平原に降ろしてもらい、テントを張り、たった一人で一か月前後キャンプをしながら撮影するというもの。そんな中で生まれた写真とエッセイで構成する舞台を作り上げる為には、普段通りの俗な生活をしながらでは不可能だと考えた。

さすがに一か月山奥に籠って、キャンプをしながら構成台本を練り上げる事は出来ないが、星野さんの言葉の深部を少しでも掴む為に、仕事以外では誰とも会わない環境を作り、お酒も一滴も飲まず、何冊もの星野さんの本に向き合い、その深遠なる言葉の世界に浸り続けた。その結果、一か月間で納得のいく作品を作り上げることができた。

「悠久の自然 アラスカ」は、星野さんがアラスカで出会ったさまざまな動物たちとの物語を、観客の皆様がただ受け身で聴くのではなく、ご自身の想像力で一緒に紡いでいく作品となっている。そして、星野さんのまるで散文詩のような言葉の数々から、『人と自然との関わり』や、『人と人との関わり』、慌ただしい日常生活の中でつい忘れてしまう、『人として大切な何か』を、感じて頂ければと思っている。僕は星野さんの珠玉の言葉を、星野さんの心を、真摯にお客様にお伝えし、少しでも皆様の励みになれたらと思っています。

僕は星野さんの言葉を語っていると、とても心が穏やかになり、元気になる。

「悠久の自然 アラスカ」を、全国の人たちに届けられたらと思う。


磯部 弘