この写真集は2冊目でシリーズ2である。 前回のABUSOLUTE ELSEWHEREは きっとあるだろう何処か ここではない何処か という意味あいで言ってみれば 自分探しの旅をテーマとしている。 アフリカから始まった旅 もう、20年程前のことだ その頃イクバルという世界中の流れ者が集まる宿が ナイロビのリバーロードの近くにあった 若かった僕はそこで人生の先輩達からいろいろな事を聞き出し 街をあとにした モンバサからマタトウという乗り合いバスに12時間程ゆられ はしけで渡り 西洋人達が皆、パラダイスと言っていたラム島に着いた 途中、雨で道が川になってしまい 荷物を頭にのせ川を渡ったりした。 あちこちの小さな村に止まりお茶休みもした。 ラム島には夜遅く着いた 波止場は暗く こんな時間にどうしたらよいだろう 宿はあるのか という不安がでいっぱいだった 実は僕はこの不安が好きだったんだな と今にして分かったのだが・・・ その後、何回もこんな不安にあった やがて、それを楽しめるようにもなった 楽園といわれたこの島で僕はマラリアになり 2週間程安宿で倒れていた 意識がぬけて天井をかんじた時があった そんな時、僕はふと 煩悩を考えた すると、意識は身体にもどりやがて ベッドから天井を眺めている自分がいた。 この世に僕をとどめておいてくれるのは 煩悩だった 僕は一錠のアスピリンと煩悩で助かったのだ 実はこの時 部屋を一人のドイツ人とシエアしていた 彼はなにも食べれなくなった僕に ライムジュースをもってきてくれた この時の一杯は忘れられない やがて、僕達はナイロビの街で別れた いつまでもヒョロながい彼は手を振っていた 無表情で兵隊みたいだった 彼とは魂は何処からきて何処へ行くのかという事を 島のおおきなコウモリの飛ぶヤシの木の下でよく話しあった 彼はマリファナ好きで どこからかよく手に入れてきていた 何年かして、彼とはカッセルという町で再会した だけど、その後消えてしまった 手紙は出しても帰ってくる 住所変更というハンコが押されて... 僕はずっと長いことヨーロッパの写真を撮り続けてきた NO MATTER WHERE YOU GO 今回のこのタイトルは 何処へいっても という意味あいである 僕はものをつくる時二つの面からとらえることが多い 明るさと暗さ、笑いと悲しさ、生と死 この写真集は後者がテーマになっている 静けさである このシリーズ2の写真選びを一緒にしていてくれた女性がいた でも、もういない ガンで亡くなったのだ 彼女はよく笑い明るかった そんな彼女が病気を知る前に じっと眺め、いいと言ってくれた写真があった この写真集は暗さとか悲しさ、静けさをテーマにしているが 一番大事にしている事は やさしさである 僕は何ごともハッピイエンドが好きだ |
2002 4/18
|