断章-2-

20代の時アフリカに行き死にそうになった。
マラリアにかかり10日間ベッドで倒れていた。
その島は美しくヨーロッパのヒッピー達はパラダイスと言っていた。
モンバサから陸路、小さなバスでラムという島へ向かう。
何時間もかかった。
最後は、はしけで渡るのだ。
不安と闇に沈んだ島は全体像が見えず、ただ大きなヤシの木が揺れていた。
すぐ近くの安宿を何も考えず、すぐにとった。
確か、500円程だった。
そして、ベッドには蚊帳が張ってあった。
翌朝、窓を開けた時の光は今でも覚えている。
眩しい海。
そして、そこに暫く居着くことになってしまった。
でも、僕にとってはこの島はパラダイスだけではなく試練でもあったのだ。

何日も食事がとれず、高熱にうなされたベッドで、
もうだめかなと思っていた時、
ひとりのドイツ人がライムジュースを飲ませてくれた。
やがて、その甘さと酸の香りで、僕の意識はゆっくりと覚醒していった。
大げさに言えば僕は一錠のアスピリンとライムジュースでなんとか生還できたのだ。
ふらつくからだで再び眩しい海を見た時はうれしかった。
あの一杯は今でも忘れられない。

ドイツ人とは、ラム島へ向かう乗り合いバスの旅で知り合った。
彼はでっかいラジカセを持ち、後部座席に座り、
大音量でピンク・フロイドをかけ不可思議な笑いを浮かべていた。
カセットテープが大量にビニール袋に詰め込まれ、
足下にころがっていた。
廻りに座っているのはニワトリを抱いた黒人たち。
マサイは槍とコウモリ傘を持って揺られていた。
野生の香り。
道はデコボコで埃だらけだった。
僕は胸いっぱいの期待を抱きパラダイスといわれる島へ向かっていた。